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PRRS, PRDC | 2020.9.27 Pig Health Today

低レベルのPRRSウイルス血症を呈する新生子豚へのワクチン接種は有効である

ホセ・アングロ 獣医師 ゾエティス(米国) PRRSスペシャリスト

Q: 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルス陽性の豚群では、子豚のへい死率が離乳後の育成期で高くなることがあります。PRRSウイルスに感染した新生子豚(ウイルスを保有している豚)にワクチンを接種することで、育成子豚のへい死率を下げることはできるのでしょうか?

アングロ獣医師:これは何年も前から養豚業界で問われていることです。ワクチン接種によりウイルスの排泄量を減らし、PRRSの臨床症状を最小限にすることができます。このため、育成期のへい死率を抑えることができなくても、ウイルスを保有している新生子豚にワクチンを接種する生産者もいます1。一方で、ウイルスを保有している新生子豚にワクチンを接種してもメリットはないと考える生産者がいます。この疑問に対して、私たちはPRRSウイルス陽性の子豚へのワクチン接種が有効なのかを明らかにするため、大規模な野外試験を行うことにしました。

Q: 野外試験はどのように行われましたか?

アングロ獣医師:各3,000頭の母豚がいる4カ所の農場で、すべての母豚にゾエティス社が開発した弱毒生ワクチン「フォステラPRRS」を年3回接種しました。

生後4~5日齢の子豚の断尾や歯切等の出生後処置をする際に処理液を採取し、PRRSウイルスの検査を行いました。4カ所の農場のうち1ヵ所では、処置時にフォステラPRRSを接種しました。残りの3カ所の農場では、子豚へのワクチン接種を実施しませんでした。

育成期の終了時期にあたる9週齢になったとき、すべての農場でへい死率を比較し、ワクチン接種群と未接種群に差があるかどうかを調べました。ワクチン接種群については、へい死率とウイルス血症の程度に関連性があるかを調べました。

Q:ウイルス血症の検査方法について教えてください。

アングロ獣医師:複数の子豚から採取した処理液を混合したサンプルを使用しました。260頭以上のサンプルをPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で検査し、ウイルス血症のレベルを示すCt値を求めました。Ct値の数値が低いとウイルス量が多く、Ct値の数値が高いとウイルス量が少ないことを示しています。

Q:今回の研究における、Ct値を教えてください。

アングロ獣医師:Ct値の判定基準は以下の通りです。

低Ct(ウイルス血症が多い):24.2未満
中程度のCt(中程度のウイルス血症):24.2以上、29.8未満
高Ct(ウイルス血症が少ない):29.8以上、37未満
陰性Ct(ウイルス血症なし):37以上

Q:試験の結果はいかがでしたか?

アングロ獣医師:処理液から得られたCt値は、育成期におけるPRRSを原因とするへい死リスクを知るのに活用できると結論づけました。

ワクチン接種はウイルス血症のレベルが高い(Ct値が低い)豚にはあまり効果がありませんでした。Ct値が1下がると、ワクチン接種群と未接種群を含む全頭でへい死率が2%上昇しました。ワクチン接種群に限って見ても、Ct値が1下がるとへい死率が2%上昇しました。

言い換えれば、Ct値の低い豚では、ワクチン接種とへい死率の上昇に関連性があるということです。しかし、Ct値が高いPRRSウイルス陽性豚にワクチンを接種することは、メリットがあると考えられます。

Q:それでは、ウイルス血症が中程度の子豚はどうでしょうか?

アングロ獣医師:ウイルス血症が中程度の子豚にワクチンを接種しても直接的にへい死率を下げられないかもしれません。しかし、PRRSウイルスの排泄量が減り、臨床症状が軽減されるという間接的なメリットがあります。

Q: 高レベルのウイルス血症を呈している子豚を助けるにはどうしたらいいでしょうか?

アングロ獣医師:生産者は獣医師と協力して、処理液をPCR検査にかけてCt値を入手し、その結果に基づいて管理戦略を立てる必要があります。空いている施設があれば、ウイルス血症のレベルが高い豚を隔離した方が良いでしょう。その豚の治療は難航するでしょうから、より集中的な管理が必要かもしれません。 また、二次的な細菌感染症にかかりやすく、抗生物質による治療を必要とするかもしれません。

Q:処理液のPCR検査は正確ですか?コストパフォーマンスはいいのでしょうか?

アングロ獣医師:処理液のPCR検査は、血清や断尾時の血液スワブを用いたPCR検査よりも、PRRSウイルス陽性豚を検出する感度が高いことがわかっています2。30頭分の子豚の血清サンプルを5頭ずつにまとめて検査する月額費用は、何百頭もの子豚の処理液を6つに分けて検査する費用に相当します3

訳注:処理液や血清のPCR検査費用は米国におけるものであり、日本で同じであるとは限りません。

  • 1.Savard C, et al. Efficacy of Fostera PRRS modified live virus vaccine against a Canadian heterologous virulent field strain of porcine reproductive and respiratory syndrome virus. Can J Vet Res. 2016 Jan;80(1):1-11.
  • 2.Lopez W, et al. Monitor herds for PRRS using processing-fluids samples. National Hog Farmer. 2017 Nov 6.
  • 3.Lopez W, et al. Porcine reproductive and respiratory syndrome monitoring in breeding herds using processing fluids. Swine Health Produc. 2018;26(3):146-150.

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