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抗菌剤 , IPC2020.3.16

薬剤耐性菌を増やさないために抗菌剤の慎重使用を実施しよう

有限会社サミットベテリナリーサービス 石関 紗代子 先生

抗菌剤に関する用語解説

(1)静菌・殺菌作用

古典的に、抗菌剤について「静菌性」「殺菌性」という分け方がありました。しかし、この区分自体の有用性・妥当性について国内外の専門家から疑問視する声もあがっており、現在では、後述する「PK/PD理論」に基づいて薬剤の用法用量設定が行われています。

抗菌剤の抗菌活性を示すパラメーターとして、最小発育阻止濃度(MIC)、最小殺菌濃度(MBC)があります。これを指標に、MICとMBCが近いものが殺菌性、MICとMBCが離れているものが静菌性と言われていました。しかし、これはあくまでも試験管内で特定の培養条件・特定の菌数濃度で測定した値の比較で、感染時の細菌増殖部位でそのままの抗菌活性が発現すると考えられません。 つまり、殺菌性の抗菌剤も菌数が多ければ静菌性になるし、静菌性の抗菌剤も菌数が少なければ殺菌性に働くのです。そのため、臨床現場で抗菌剤を使う時には、殺菌性、静菌性という用語にあまりとらわれすぎる必要はないでしょう。

(2)PK/PDの考え方

現在の抗菌剤の殺菌力を考える概念として重要なものが、PK/PD理論です。抗菌剤の投与では、治療開始時から十分量を十分な期間投与することが重要ですが、これを科学的に実践するためにPK/PD理論に基づいた薬剤の用法用量設定が行われています。PKとは薬物動態学(Pharmaco-kinetics:PK)、PDとは薬力学(Pharmacodynamics:PD)のことです。 PK/PDでは、抗菌剤の最適な投与方法を検討するために、いくつかのパラメータが用いられます。ここではその代表的なものをご紹介します。 抗菌剤の薬物動態と効果を予測するための因子は、次の3つです(PK/PDパラメーター)。

Cmax/MIC:最小発育阻止濃度(MIC)に対する最高血中濃度(Cmax)の比率
AUC/MIC:MIC値に対する血中濃度曲線下面積(AUC)の比率
Time above MIC (TAM):MIC値以上の血中濃度を示す時間の割合

抗菌剤の殺菌力が、これらの因子のうち、何に依存するかによって、「濃度依存性抗菌剤」「時間依存性抗菌剤」の2つに分けて考えられています。

●濃度依存性抗菌剤
殺菌力が最高濃度(Cmax)に依存するものです。例えばニューキノロン系、アミノグリコシド系、ポリミキシン系が該当します。濃度依存性抗菌剤は、1回に十分量を投与し、濃度のピークをしっかり上げることが重要です。逆に言えば、少量を頻回投与しても効果は期待できません。

●時間依存性抗菌剤
殺菌力が、最小発育阻止濃度(MIC)よりも高い濃度にどれだけの時間、細菌をさらしたか、その時間によるものです。つまり、MICよりも高い濃度にどのくらい長く保てるか、その時間に依存します。時間依存性抗菌剤は、投与回数を増やすことで、体内での濃度をMICよりも高く維持しておき、MICを下回っている時間が少なくなるようにすることが重要です。このグループには例えばβラクタム系(ペニシリン系)、マクロライド系、テトラサイクリン系が該当します。

(3)薬剤感受性試験

①MIC値
薬剤感受性を調べる方法として、MIC値を決定する寒天平板希釈法や微量液体希釈法があります。MIC値は、測定した細菌の発育が認められなくなった濃度の最小値を示します。MICが低値に分布する薬剤は効果が期待でき、高値に分布する薬剤は効果が期待できないと考えます。
しかし感受性試験の結果、様々な抗菌剤がずらりと並べられていた時に、「抗菌剤の中でMIC値の低いものの方が、相対的に効きが良い」と判断することは誤りです。 臓器移行性が考慮されていないこと、MICを超えている時間の幅について考慮されていないこと、また、MICの数値だけではなく、対象菌種に対するその抗菌剤のブレイクポイント(感受性か耐性かの境目)も合わせて考慮する必要があることなどが理由として挙げられます。臨床的にどの抗菌剤を選んだらよいか、という相対比較のためにMIC値を使うことはできません。

②ディスク法
臨床現場では労力や経済性から、抗菌剤による阻止円の大きさに基づき薬剤の感受性を定性的に判定するディスク法が用いられています。MIC値と阻止円径には、関連性があることが知られています。

阻止円の大きさによって「+~+++」または「S(感性)、I(中間)、R(耐性)」などの感受性試験結果が得られますが、これらの判定は、MIC値と阻止円との相関から導き出された定性的な結果です。同一菌株に対してA剤「+」とB剤「+++」であればB剤のほうが感受性が高い、ということになりますが、これはあくまでも培地上の結果であり、薬物動態(PK/PD)について考慮されていないことは注意すべき点です。培地上の結果と、臨床(豚の体内の、感染部位)での結果が、必ずしも一致しないこともあり得るということも十分注意しながら結果を見なければいけません。

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