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抗菌剤 , IPC2020.3.16

薬剤耐性菌を増やさないために抗菌剤の慎重使用を実施しよう

有限会社サミットベテリナリーサービス 石関 紗代子 先生

豚用抗菌剤の投与方法

養豚場における抗菌剤の投与方法は、飼料または飲水に添加する「経口投与」と、「注射投与」(主に筋肉内投与)です。以下にそれぞれのメリットとデメリットを整理します。

経口投与(飼料添加、飲水添加)

経口投与のメリットとして、あるグループの豚に対して同時に投与を行えることが挙げられます。豚は群で飼育されていることが多いため、経口投与によりスピーディな投薬が可能になります(群治療)。経口投与では、薬剤が一定時間持続的に投与されるため、投与期間は血漿中濃度が維持されやすくなります。使用禁止期間が筋肉内注射や皮下注射と比べて短いことも特徴です。また、薬剤が比較的安価である点もメリットと言えるでしょう。

デメリットとして、期待した投与量に対して実際に豚が口にする摂取量にばらつきが起こりやすいという点が挙げられます。摂取量のばらつきを小さくするために、飼料添加では飼料中に均一に混ぜる作業をきちんと行うことが重要です。薬剤の混ざり具合にムラがある場合には、ある豚は薬剤を摂取するけれども、別の豚はほとんど摂取しない、ということが起こってしまいます。食欲が無く餌を食べない豚には飼料添加は効果がありません。また、飲水添加を行う場合には水中に一定濃度で薬剤を添加する設備が必要となります。その設備や作業、設定に不具合がある場合には、治療対象豚に必要な薬剤量が届きません。飲水添加の実施時間と濃度は十分な検討の上で決定し、器材が適切に作動しているかを確認する必要があります。

経口投与の場合、投与後の吸収は比較的速いのですが、多くの場合で持続時間が比較的短く、注射投与と比べると一般に血漿中濃度が低くなります。つまり、感染初期や軽症例では治療効果が得られても、感染症が進行している場合には、十分な効果が得られないこともあります。

投与期間と投与範囲の設定によっては健康豚を含めて投薬されてしまう可能性(薬剤の無駄)もありますので、状況に合わせて、投薬プログラムを見直していく必要があります。

注射投与(主に筋肉内注射)

注射投与の場合には、1頭1頭、注射での投与を行います(個体治療)。豚の採食行動に左右されず、病気の個体に対して確実に必要量を投与できることが最も大きなメリットです。

デメリットとして、注射作業に時間と手間がかかることが挙げられます。特に治療対象数が多くなると、膨大な作業時間が必要になります。個体治療の場合には、体調不良の豚を早期に発見する、ということが重要になります。群全体に感染が広がる前に個体単位で治療するということです。1頭あたりの投薬コストが経口投与薬に比べて高価であることが多い点もデメリットのひとつと言えますが、早期発見と早期治療を適切に行うことができれば、全体の薬剤コストを抑えることも可能です。

また、養豚場で注射投与を実施する場合、当然ではありますが、針や注射器の衛生管理と在庫管理が、食品安全の観点からも重要であることを補足しておきたいと思います。

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