革新的な抗体医薬テクノロジー
サイトポイント®の作用機序1)
- サイトポイント®は、イヌIL-31のみを標的として特異的に中和するモノクローナル抗体(mAb)※です。
※モノクローナル抗体(mAb:monoclonal antibody):B 細胞の単一細胞系からクローン化された単一の均質な抗体 - 有効成分のロキベトマブは、犬において掻痒を誘発する主要なサイトカインであるIL-31を抗原と認識し、抗原-抗体複合体を形成して中和することにより、IL-31と受容体の結合を妨げます。
その結果、IL-31介在性の細胞シグナル伝達を抑制し、犬アトピー性皮膚炎に伴う症状やアレルギー性皮膚炎に伴う掻痒を緩和します。
サイトポイント®とアポキル錠®の
作用機序の比較
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ロキベトマブはIL-31と細胞外で特異的に結合して、IL-31が細胞表面上の受容体に結合することを妨げます。その結果、受容体が活性化されることがなく、IL-31介在性の細胞内シグナル伝達が誘発されません。
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IL-31などのサイトカインが受容体に結合すると、細胞内のヤヌスキナーゼ(JAK)が活性化します。オクラシチニブは細胞内において主にJAK1 の活性化を選択的に阻害します。
その結果、掻痒誘発性サイトカインのIL-31や、複数の炎症性サイトカインによって誘発される細胞内シグナル伝達の経路が遮断されます。
サイトポイント®の
抗体医薬テクノロジー1)
- モノクローナル抗体は、疾患に関連した特定の標的抗原上の一つのエピトープ(抗体結合部位)を認識して結合します。これは、病原体に対する生体の免疫機序と同様な反応(抗原抗体反応)を治療に応用したものです。
- 抗体医薬品はタンパク質製剤であるため、生体に投与すると異物として認識されて免疫反応が生じます。これを抗体医薬における免疫原性といいます。抗薬物抗体が産生されると薬剤の有効性および安全性に影響を与える可能性があります。
- 犬での安全な臨床応用のため、サイトポイント®はマウス由来のモノクローナル抗体を高度にイヌ化し、アミノ酸の90%以上を犬由来の抗体と同一としました。 種特異的にすることで、サイトポイント®が投与された犬で免疫原性の発現するリスクが最小化されています。
従来の医薬品と抗体医薬品の比較
従来の医薬品(低分子医薬品) | 抗体医薬品 | |
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定義 | 低分子量の有機化学物質、 合成化学物質 |
ポリクローナル抗体または モノクローナル抗体 |
サイズ | 低分子 | 高分子のタンパク質分子 |
投与経路/投与頻度 | 経口薬を中心に様々 毎日投与することが多い |
主に注射薬 数週から月に1回程度 |
標的 | 細胞内に存在する分子 | 細胞外や細胞表面を標的とする 例)サイトカイン類や細胞表面の分子 |
代謝および排泄 | 肝臓、腎臓における代謝と排泄 | 蛋白異化:通常のタンパク分解経路を 介して排泄される |
監修:山口大学獣医共同学部 教授 水野 拓也 先生
参考文献
1):国内承認申請資料