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子豚、離乳、飼養管理2020.4 ピッグジャーナル

離乳後1週間が勝負!子豚管理
~洗浄・消毒、水、観察して子豚の状態を知る~

エクシュタイン・スワイン・サービス 宮下マリ先生

 

離乳が子豚にとって大きなストレスであることは周知のとおりです。本来なら子豚は数ヶ月にわたり少しずつ離乳されていくものですが、養豚場ではそうはいかず、子豚は突然に母豚から離されるため、精神的ストレスに加え、母乳がなくなることで下痢やその他の疾病を発症しやすくなります。今回は、離乳後の子豚のトラブルを予防するために現場でできる管理対策についていくつか紹介します。

疾病発症のメカニズム

まずは、疾病が発症するメカニズムについて考えていきます。離乳直後は大腸菌やレンサ球菌による問題が発生しやすいですが、これらを発症させないためには、①豚の免疫力を高くする飼養管理と、②環境中の菌量・ウイルス量を減らすこと、この2つを組み合わせることが必要です(図1)。言い換えると、「免疫力の高い豚をきれいな環境で飼養する」ということになります。なぜなら、豚の免疫と病原菌量は天秤にかかっており、そのバランスが崩れたときに疾病が発症するからです。例えば、離乳後の下痢について考えた場合、いくら健康で免疫力の高い子豚を離乳しても消毒が不十分で病原体が残っている豚舎に導入すれば下痢を発症してしまいます。逆に、消毒を隅々まで徹底していても、飼料や水を十分に摂取できない環境で飼養すれば子豚の免疫力は低下し、同じように下痢をしてしまいます。

図1:疾病は、豚の免疫力と病原菌量のバランスが崩れたときに発症する。病原菌の量を減らすためには洗浄・消毒、免疫を高めるためには適切なワクチンプログラム、良い環境と良い飼養管理が重要

この原理は、基本的にはどの疾病にも当てはまります。農場に常在するレンサ球菌や大腸菌、ブドウ球菌等の病原体はもちろん、PRRSやAPPといった特定の病原体にも言えることです。例えば、PRRS陰性の農場にPRRSが侵入してしまった場合、最初は豚が全く免疫をもっていないため、ウイルスが優勢になり被害が発生しますが、豚が免疫をもち始めることでバランスがとれるようになり、少しずつ被害が軽減されていきます。農場に常在する病原体に関しては、豚の免疫を高めると同時に、消毒で病原体の量を減らして感染機会を少なくし、バランスを崩さないようにすることがポイントです。免疫を高くするためには、適正なワクチンプログラムに加え、子豚の成長を阻害しないための管理が最も重要です。

 

病原体量を減らすためには洗浄・消毒が欠かせません!

洗浄と消毒について、あらためて考えてみましょう。洗浄と消毒は重要であるにもかかわらず、地味な作業で、人によって好き嫌いが出やすい作業でもあります。しかし、この一番の基本となる洗浄・消毒を怠ってしまうと、あとで苦労することになります。哺乳中の子豚は、常乳に含まれる抗体(IgA)によって、多くの下痢菌から守られていますが、離乳されると母乳がなくなってしまうため、ちょっとした量の菌でも下痢を発症する可能性があります。洗浄は必ず上から下方向に、給餌器下や角などの隠れた場所にも届くよう、丁寧に実施する必要があります。消毒後の石灰塗布は、豚の口が届く場所はすべて、真っ白になるように厚く塗布することが大事です。消石灰は濡れるとpHが12を超え、強アルカリになることで菌やウイルスを死滅させるだけでなく、給餌器周りにできた凸凹部分やたたきの割れ目部分に潜む菌を封じ込める効果があるので、濃度が薄いと封じ込め効果が発揮されません(写真1)。また、洗浄が不十分であれば、白い石灰の下から有機物が茶色く滲み出てくるので、洗浄が十分にできているかのチェックとしても活用できます。写真2の農場では子豚が良好な状態で離乳されていましたが、子豚舎移動後に必ず下痢が発生し、体を汚して衰弱する子豚もいました。石灰の濃度を水:石灰=3:1にし、真っ白になるよう濃く塗布したところ、下痢の発症が見られなくなり、オガ屑を散布したり、治療したりといった下痢対応の必要性もなくなりました。

写真1:給餌器の下、給餌器周りの凸凹部分、豚房の角部分、たたきの割れ目のなかには病原体が潜むので、石灰は真っ白になるよう厚く塗布する。この状態では石灰濃度が不十分

写真2:給餌器の下、給餌器周りの凸凹部分、豚房の角部分、たたきの割れ目のなかには病原体が潜むので、石灰は真っ白になるよう厚く塗布する。この状態では石灰濃度が不十分

水をチェックしましょう!

離乳子豚の体は70%が水でできています。離乳時に水が不足したり、下痢したりすればあっという間に子豚は脱水し、危険な状態に陥ります。母乳は水分が90%ほど含まれているのに対して、固形飼料は水分が8~10%程度です。離乳直前の子豚は毎日、母乳を介して1頭当たり水分を700~800mL摂取していますが、離乳直後からはこの量の水を自力で飲む必要があります。離乳後の水分補給をスムーズにするためには、分娩舎で水を飲むことを覚えさせる必要があり、分娩舎では子豚の給水設備が不可欠です。さらに、固形飼料を食べるための前提は水を飲むことなので、水を十分に摂取できない環境では子豚の餌づけもうまくいきません。一般的に、子豚は固形飼料を食べるためには、その約3倍の水を必要とします。例えば、離乳時に300gの飼料を摂取する場合は、約900mLの水を飲むことになります。ところが、離乳直後の子豚は意外にも水を飲んでいない可能性があります。離乳して24時間以内にピッカーから水を飲んだ子豚は51%しかいなかったことが報告されています(McManusら、2015)。即ち、見回り時に子豚が水を飲んでいる姿を確認できても、それは一部の子豚だけかもしれません。給水設備がカップ(分娩舎)からピッカーに代わる場合や、給水場所が少ないときは、すべての子豚が離乳直後から水を十分に飲めるようにする工夫が必要です。そのためには、離乳後の数日間はパン(円形給餌器)を置いて水を飲ませたり、母豚だけ離してしばらく分娩舎に置く場合は母豚の給餌器に水を溜めたりすることが有効です(写真3)。
給水器の数は、子豚10頭に対して1つが理想です。また、給水器の高さ調整、水圧やつまりも見回りでチェックすることが大事です。冷たすぎる水は子豚が嫌がります。水質検査は忘れがちですが、年に1回は検査することも重要です。井戸など、水源の水質調査と同時に、子豚舎のピッカーから採取した水も検査する必要があります。水源の水質が良くても、配水管に蓄積されたバイオフィルムを経由した水に一般細菌や大腸菌が含まれていると下痢や浮腫病の原因となります。

写真3:離乳直後の給水
左:円形給餌器で水を提供。右:分娩舎で子豚を数日間、飼養する場合は母豚の給餌器に水をためる

管理目標は「常に給餌器周りに子豚がいること」

子豚管理者は豚舎の温度、湿度、換気量、給餌量、水等、色々なことを同時に考えなくてはなりません。子豚が快適に過ごしているかどうかを確認する最もシンプルな方法は、子豚を観察し、子豚に教えてもらうことです。すべての条件が揃い、子豚にとって快適な環境ができていれば、給餌器周りには必ず子豚が群がっています。子豚が給餌器周りに群がっていない場合、何が足りていないのか、1つひとつチェックしていきます。
写真4の子豚を見ると、給餌器周りには子豚がたくさん群がっています。豚舎のなかは活気があり、子豚が活発に動き回っていることも分かります。子豚の腹は膨らみ、塊になって寝ている様子もありません。子豚舎のドアをいきなり開けると子豚は逃げてしまうため、通路の窓から観察するか、子豚に気づかれないよう、ドアをそーっと開けて子豚の様子を観察します。子豚の動き、鳴き声、豚舎のにおい、温度、湿度を、5感を活かして意識していると、自然と異変に気づくようになります。写真5は離乳後4日目の子豚です。子豚は隅で塊になって寝ており、給餌器周りに子豚がいません。子豚がパイルアップしているこの状態を見ると、寒がっていることが分かります。ここで重要なことは、寒がっている=豚舎温度が足りない、という結論だけで終わらないことです。子豚が寒がる理由は温度以外にもたくさんあるので、本当に温度だけなのか、他の問題が起きていないかのチェックをする必要があります。温度や湿度が十分でも、飼料を食べていなければ体温が下がり、寒く感じます。また、水が足りていなければ飼料を食べることができず、同じく、体温が低下します。風が当たっていれば、飼料、水が十分でも子豚は寒がります。さらに、下痢を起こしていれば脱水により寒く感じます。このように、子豚が寒がっている、という1つの状態から、複数の原因が考えられ、その原因を見つけるためには1つひとつチェックし早く対応することが離乳後のトラブルを減らすことになります。逆に、このシグナルを見逃すといつの間にか子豚は痩せ始め、下痢をし、神経症状や呼吸困難を呈し死亡が出始めます。疾病の多くは、発症する前に何等かの前兆があり、豚にとって快適でない環境の結果として発症するものと考えます。

写真4:子豚が給餌器に群がり、活発な状態。子豚が快適に過ごしていることが分かる

写真5:子豚がパイルアップし、給餌器周りにいない。何らかの異常があるので体調を崩す前にチェックが必要

豚舎の環境管理

離乳後の温度や湿度に関するガイドラインは多数ありますが、この数字だけに頼らないことが重要です。外気温、豚舎構造、床材、そして子豚の健康状態に応じて調整することが最も大事なポイントです。とくにウインドウレス豚舎では、決められた日齢に決められた温度設定を入力し、その後の子豚観察を怠るケースがあります。離乳時の豚舎の適正温度は農場ごとに大きく異なり、20~28°Cで推移しますが、体感温度は温度だけでなく、湿度にも影響されます。気温が30°Cを超えても、湿度が低い場合と高い場合では感じ方が違うことは誰もが納得すると思います。暑いときに湿度が高いとムシムシと感じますが、湿度が低くカラッとしていればそれほど不快に感じません。豚も同じで、感じる温度は湿度にも左右されます。豚舎に温度計が設置されていることは多いですが、湿度計を見ることは稀です。温度と湿度は必ずセットであることを考えると、豚舎には温湿度計を豚の頭の高さに設置し、見回りで確認する必要があります。温度と湿度を掛け合わせた数値(=温度×湿度)を空気熱量指数と言い、離乳直後の子豚の空気熱量指数は2000前後が適切です(例.豚舎温度が26°Cであれば、湿度は75%ほど)。温度が低ければ湿度を高めることで適正な空気熱量指数に調整することができるということです。
部屋全体の温度を確保できない場合でも、子豚が寝るスペースだけは局所の暖房で温める必要があります。快適な寝床さえ確保できれば問題にはなりませんが、寝ている間も寒いようならあっという間に体調を崩してしまいます。そのため、子豚の寝姿を観察し、ヒーターの強さや高さを小まめに調整することが重要です。ヒーターを調整しても子豚がパイルアップしている場合は、さらに工夫が必要です。ヒーターの熱が上に拡散しているようなら板で寝床に屋根を設置する、すき間風があるようなら入り口を封鎖するなどの対応が必要です。

おわりに

離乳から1週間の子豚は母乳がなくなることで病気になこりやすく、ちょっとした管理ミスで状態を崩しやすい敏感な時期にいます。さらに、この時期の増体が出荷日齢にも大きく影響し、離乳後1週間の1日当たり平均増体量(ADG)が227g以上の子豚と150g以下の子豚を比較した場合、110g到達日齢が最大10日も異なることが報告されています(M.Tokach,1992)。離乳後1週間までの肝心な時期には、子豚をしっかり観察し、不調や不具合を見逃さずにすぐに対応することが、子豚のその後の順調な成長がつながっていきます。

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