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マイコプラズマ , 診断 | 2017.10.30 Pig Health Today

マイコプラズマ ハイオニューモニエの正確な診断は難しい。しかし必要不可欠である。

Pig Health Today

「マイコプラズマハイオニューモニエ(以下、Mhp)感染を診断することは今もってしても難しいのですが、体系的なアプローチに加えて臨床症状と診断テストを用いることで自信を持って行うことができます。」とアイオワ州立大学の教授であり獣医師のケントJ.シュワルツ先生は言います。
「豚がカラ咳やマイコプラズマ性肺炎によると思われる呼吸困難を呈していても、他に原因があるかもしれないので診断して確認する必要があります。」
「マイコプラズマ性肺炎の診断は、Mhpが気道の線毛に定着しているときは特に困難です。臨床症状が表れるまでに、数週間または数カ月かかることがあります。その間、飼料要求率と一日平均増体量が低下します。このような場合、Mhp感染による臨床症状は、豚の感受性、Mhpの暴露量や株の病原性、さらに他の細菌やウイルスの複合感染による悪化の有無など多くの要因が挙げられます。」とシュワルツ先生は説明を続けます。

観察から始める

シュワルツ先生がアドバイスする体系的なアプローチは、臨床的な観察から始まります。「豚を観察することで、Mhp感染の有無を判断することができます。しかし、正確に判断するには、飼養環境下にいる豚を定期的に検査して、病気や異常、危険因子を特定する必要があります。」
Mhp感染の臨床症状は、育成から肥育期といった後半に見られる傾向があります。「生産者がわかるような短いカラ咳は、一日の初めに行う見回りでみられることが多いです」と彼は言います。
「発熱は一般的にMhp感染だけではみられません。豚インフルエンザや豚繁殖呼吸障害症候群(PRRS)の発症とは対照的に、飼料の消費はわずかだけ減少します。Mhpが関与する臨床的な病変は、豚が免疫学的にナイーブ(まだ一度もMhpに感染していない状態)であったり、感染症の併発や非常に大きな環境ストレスがある場合を除き、一般的に自然治癒します。」
「感染症が併発して豚呼吸器複合病(PRDC)になると、Mhpの感染状況は悪化します。この時、へい死率が劇的に増加します。」とシュワルツ先生は述べます。
PRDC発生での一般的な複合感染には、PRRSウイルス、インフルエンザA型ウイルス、および豚サーコウイルス2型が含まれます。細菌では、パスツレラ ムルトシダ、連鎖球菌、ヘモフィルス パラスイス、アクチノバチルス スイスが含まれます。」注1)とシュワルツ先生は続けます。

肉眼的病変を探す

臨床的な観察に続いて剖検を行い、Mhp感染または他の病原体に特徴的な肉眼的病変を探す必要があります。ここでは、「この疾病や病変を引き起こしているのは何か?を問う場です」とシュワルツ先生は言います。
「マイコプラズマ性肺炎は、通常、肺の前葉および中葉の辺縁部に肉眼でわかる病変を引き起こします。肺病変の大きさには幅があり、合併症のない症例において肺全体の10%を超える場合があります。しかし、肺病変は個々の豚によって非常にばらつきがあり、肺にわずかに見られるものから肺の30%に及ぶものまであります。より広範囲で肺が影響を受けている場合、他の細菌が関与している可能性が高いのです。」とシュワルツ先生は言います。

組織病理学的に評価する

シュワルツ先生のMhp診断リストの次に記載されているのが組織病理学的評価です。肺病変の顕微鏡検査は、Mhpによる組織変化をみることが目的です。また、他の呼吸器病の病原体の関与を排除することにも役立ちます。
病理学的診断はホルマリン固定された肺切片を用います。自然死した豚は複合感染と区別がつかないので、できれば安楽死させた感染豚を用いて行います。 「約1×3×3cmほどの大きさの肺切片を、見た感じが異なる部分から切り取ってください」とシュワルツ先生は言います。「肺切片には、中間部位(正常部と病変部の両方を含む切片)と気道を含める必要があります。たいてい、各肺葉の辺縁部位というよりも、大きな気道に近い肺の部分になります。

Mhp特有のテスト

Mhpが感染しても無症状のことがあるので、臨床症状、肉眼的病変、および組織病理学的な評価をした後、Mhpに特有の臨床検査をすることをシュワルツ先生は推奨しています。
Mhpを培養することで確定診断できますが、長い時間と費用を要する工程であることから、この方法はめったに採用されません。
「検査ラボにより、診断テストの項目や診断方法がしばしば異なります。そのため、異なる検査ラボからの数値結果を比較しないようにしてください。」とシュワルツ先生は注意を呼び掛けます。
「Mhpがサンプルまたは検体に存在するかどうかを判断するためには、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)テストを用います。PCRテストは検査ラボにより、例えば、リアルタイムPCRネステッドPCRといったバリエーションがあります。正確なテスト結果を得るために最も重要な要素は、サンプル採取の技術とサンプルの品質です。」と彼は言います。
検査ラボへの輸送にかかる時間が48時間未満の場合、新鮮なサンプルは氷を入れて輸送する必要がありますが、輸送が48時間を超える場合は、PCRテスト向けにはサンプルを凍結することが望ましい取扱方法です。
サンプルの種類は異なることがあり、多くの場合、サンプル採取の専門的技術、診断方法、または輸送などの影響を受けます。Mhpを検出する可能性が最も高い順序で、優先されるPCRサンプルのタイプをシュワルツ先生は以下に列挙しています。

  • 気管支肺胞洗浄は、ゴールドスタンダードと見なされています。サンプルは剖検で簡単に入手できますし、生体でも実施できます。
  • 気道スワブも剖検で簡単に入手でき、生体からも入手することができます。
  • 肺病変は、剖検時に容易に採取できるサンプルです。病変組織に近いサンプルを取ります。肺門に近い気道は、肺炎に関与する病原体がいる可能性が最も高いところです。遠位葉だけを検査に出しがちですが、それはしないでください。肺のサンプルは、ゴルフボールの大きさで、見た感じが異なる肺の各部位を示している必要があります。
  • 咽頭部をスワブするには、豚の保定とそのために作られた専用綿棒が必要です。
  • 扁桃からの採取には、豚の保定、喉頭鏡、および長いハンドルがついた回収器具が必要です。
  • 鼻腔部からのスワブには豚の保定が必要です。症状を呈している一部の豚では陽性結果が得られます。口腔液は入手が容易であり、症状がある豚群でのMhpの検出に有益ですが、無症状の豚群においてMhpに感染しているかどうかを判定するには向いていません。

Mhpが本当にその病気の原因ですか?

Mhpの存在がわかったとしても、それが病気の原因であることは証明されません。シュワルツ先生によると、この疑問に答えることができるのは、免疫組織化学(IHC)、蛍光抗体法(FAT)、in situハイブリダイゼーション(ISH)であり、病原体を視覚化できます。
「3つの手法はすべてMhpに非常に特異的ですが、Mhpを検出するには通常よりも大量の病原体が必要なため、本質的にはPCRよりも感度が低くなります。これらの検査の精度は、サンプルの品質と疾患の進行度合いに大きく依存しています。」と彼は強調しています。
「FATは組織を用いて行われますが、IHCおよびISHはFATと同じ領域から採取した切片をホルマリン固定して行われます。」とシュワルツ先生は説明します。細菌の二次感染を示していない状態で、初期の急性臨床疾患の豚からの組織とホルマリン固定したサンプルを用いることをシュワルツ先生は推奨しています。
「肺の肉眼的病変の適切な部分を選びます。サンプルは病変領域と非病変領域の両方から1~2cmの厚さで取ってください。目視で確認できるほどの小さな気道も含まれている必要があります」と彼は続けます。「サンプルは、FATテスト用には急速に冷却し、IHCやISH(および組織病理学)用には迅速にホルマリンに浸漬して保存してください。FAT、IHC、ISH、または組織病理学のサンプルは凍結しないでください。」

抗体検出

「市販のELISA検査で行われる血清検査は、豚群の汚染状態を判定する最も一般的で経済的な方法です。臨床症状のない豚群において、Mhpに暴露したかどうかを知るのに役立ちますが、テストの感度は劣ります。言い換えれば、感染していても無症状の保菌豚を特定できない可能性があります。」とシュワルツ先生は言います。
「Mhpが定着して数週間、抗体陽転は起こりませんし、その後でも、陽転がみられるのは全頭ではなく一部、散発的です。しかし、抗体検査で陽性の豚を見つけた場合、豚群にMhpが定着していると考えてください。特に、Mhpワクチンを投与していない豚群に当てはまります」と彼は言います。

まとめ

この体系的なプロセスを使用してすべての情報を収集し、分析し、考え、妥当性のある科学文献を使って結論に導きます」とシュワルツ先生は言います。「それがすべて理にかなっているかどうか問いかけてみてください。
臨床所見が肉眼的病変やMhpに特異的な検査と一致するかどうかを問うのです。Mhpが存在し、病気の原因であるという結論に達したとき、はじめて治療やコントロール戦略に進めることができるのです」と彼は言います。

  • 注1) このPRDC構成微生物の定義は米国におけるものであり、日本においてはアクチノバチラス スイスの代わりにアクチノバチラス プルロニューモニエを加えるのが一般的である。

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