ウイルスはウイルスで、どれも同じです。本当にそうでしょうか?いいえ、そうではありません。人に感染するもの、動物に感染するもの、植物に感染するものなど、世の中にはたくさんの種類のウイルスがいます。ウイルスは、その数が非常に多いため、分類法にもとづいて、さまざまな種類やカテゴリーに分類されています。
分類には多くの階層があり、網、目、科、属、種などがあります。この同じ分類体系、リンネ式分類体系は、動物、植物、細菌、そしてウイルスのように、世界のすべての生き物をグループ分けするために用いられています。
退屈させるために小難しい話をしているのではありません。要点を言うと、リンゴとオレンジは両方とも果物であり、同じ双子葉植物綱ですが、まったく異なりますね。しがって、異なる2つの物を比較しようとした時によく使われる「それはリンゴとオレンジを比較するようなものだ」というフレーズがあります。ミカン科ミカン属の果物であるオレンジとレモンを比較するほうが分かりやすいかもしれません。子どもにもオレンジとレモンが違うことが分かりますから。同じように豚とヒトのコロナウイルスも全く違います(Fehr&Perlman,2015)。
COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2はベータコロナウイルスに属します。このウイルスがどのように世界中に拡散するかを示すために、これ以降、アルファコロナウイルス属のPEDウイルスの話をします。さらに重要なのは、世界の人々や動物達の健康をより良くするために学ぶべきことを私たちは皆さんと共有します。
2013年、コロナウイルスが米国の豚群に侵入し、米国の養豚産業に壊滅的な打撃を与えました。豚流行性下痢(PED)ウイルスと呼ばれるアルファコロナウイルスが、4月に初めて検出されました。9ヶ月後には、米国内のほとんどの養豚場に広がっていました(Alvarez e tal.,2016)。その後、類似したPEDウイルス株が世界的に急速に広がり、1年以内に多くの豚肉生産国に影響を及ぼしました。米国だけでも、PEDウイルスは豚群の50%以上に影響を与え(MSHMPレポート)、500万頭(3%)以上の豚が減少しました。しかし、矛盾しているようですが、生産者はこの疾病が発生する前に予測していた以上の純利益を得ました(Schulz et al.,2015)。
この時、重要なことは、米国への新しい病気の侵入に関する見方を変えたことです。輸入の脆弱性とグローバル生産チェーンへの依存に多くの人々の目が開かれたのです。それは、感染したことのない新しい病気が豚群に浸入してしまうことに対して、私たちがどれほど準備不足であったかを認識させられた、残酷な目覚めとなりました。
2020年に話を進めます。2019年に出現してパンデミックをもたらし、世界的に流通チェーンを混乱させ、金融市場に警鐘を鳴らしている新型ヒトコロナウイルスとの類似点をいくつか描いていきます。
わずか3ヶ月で、野生動物を起源としたCOVID-19の原因ウイルスであるベータコロナウイルスのSARS-CoV-2は、147カ国以上に広がっています。伝播という点で、COVID-19の拡大は豚のコロナウイルスやインフルエンザウイルスの場合と類似しています。
COVID-19は人々の間で急速に広がり、主に呼吸器を介すインフルエンザの広がりに似ています。COVID-19の拡がりにどの程度関与しているかは不明ですが、少なからずSARS-CoV-2は便の中に排出されることがあります。直接の接触、飛沫を介したエアロゾルの拡散、ウイルスが付着した物が主な感染経路と考えられています。1人の感染者が2人以上に感染を広げていると推定されており、大規模な発生を引き起こすことがほとんどです。現在までのところ、SARS-CoV-2が豚に感染したという科学的な報告はありません。
インフルエンザとの類似点もあります。インフルエンザは人獣共通感染症で、気道の分泌物、エアロゾル、ウイルスが付着した物との接触によって感染します。感染は、感受性の高い豚群では急速に進行していきます。2009年のH1N1インフルエンザ パンデミック株の“再生産数”の中央値は1.46(Biggerstaffら、2014年)であり、これは、感染者と接触した場合、1~2人の感受性保持者に感染が広がることを意味しています。
H1N1インフルエンザウイルスが2009年に出現したとき、1ヶ月足らずでパンデミック宣言が出され、21世紀最初のパンデミックとなりました。豚群の免疫が獲得されていない状態であったため、2009年の夏にはインフルエンザのパンデミック株は急速に広がりました。2020年を含む21世紀は、インフルエンザは一年おきに冷涼な季節に高い発生率で蔓延しています。多くの農場では年間を通じて豚にインフルエンザが流行していますが、米国では冬や春などの涼しい季節にインフルエンザ感染のピークを迎え、季節的なものとなっています。同様に、PEDウイルスやTGE(伝達性胃腸炎)ウイルスのような豚のコロナウイルスは、免疫群においても年間を通じて発生がありますが、米国では秋と冬の発生率が高く、季節性があると考えられています(20世紀のTGE発生を考えてみてください)。
一般的に、インフルエンザウイルスやコロナウイルスは高温に弱く、夏場には伝染しません。COVID-19の人への伝播を抑止させるために、旅行や移動を制限するなどの大規模な対策が取られています。これらの対策でウイルスを封じ込めることができるのか、排除できるのかはまだ不明です。豚のコロナウイルスを撲滅した例はたくさんありますが、それには規律とハードワーク、そして感受性の高い豚群を感染豚群へ移動したり導入したりするのを止めることが必要です。人の場合は、言うは易く行うは難しです。私たちの獣医療の経験と、世界中のOne Healthの専門家としての官民パートナーシップが、封じ込めと予防の手順を考える上で確実に助けとなるでしょう。
もしCOVID-19がインフルエンザに似て、季節ごとに感染を引き起こすということであれば、ふつうの風邪が周期的に流行るのと同じように、人にも周期的なヒトコロナになるでしょう。願わくば今のCOVID-19のような状態にならないといいのですが、豚コロナウイルスとインフルエンザに関する我々の知識を当てはめるとすれば、ウイルスは簡単には消えずに秋にはまた戻ってくる可能性があります。
COVID-19は現在、人の病気の問題であり、家族、友人、同僚の健康と安全を守ることに私たちの焦点を置いていますが、このことは、厳格なバイオセキュリティ対策を維持することの重要性と、新たな病気の脅威に備えて準備をしておくことの重要性を思い出させてくれます。2013年にPEDウイルスが米国に侵入したことから何かを学んだとすれば、養豚産業は準備不足であり、壊滅的な新種の病気に対処する備えができていなかったということでした。
それ以来、ありがたいことに、アフリカ豚熱のような病気の浸入を防ぐ準備に多大な努力を払ってきましたが、さらに多くのことを行う必要があります。同じような教訓がCOVID-19からも得られ、豚を飼養する私たちにとって、病気の蔓延を防ぐには人と動物の移動がいかに重要であるか思い出させてくれることでしょう。
- ※このコンテンツはPig333.com(www.pig333.com) の許可のもと転載、ゾエティス・ジャパン㈱が和訳したものです。
(原文)COVID-19 and pig viruses ‒ what can we learn?
https://www.pig333.com/articles/covid-19-and-pig-viruses-‒-what-can-we-learn_15938/


