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動物薬業界のグローバルリーダー企業であるゾエティスの日本法人社長・加藤が、業界や業種の壁を越えてさまざまな人物と対談を行うスペシャル企画の第5弾青山学院大・陸上競技部を箱根駅伝4連覇の常勝軍団に変えた原晋監督と組織構築術や人材育成術について議論し、組織論の本質に迫る

原 晋
SUSUMU HARA

青山学院大学陸上競技部監督。1967年3月8日、広島県生まれ。中京大卒業後、中国電力陸上部に進むも5年で現役引退。以後、同社で営業職などに従事。2004年3月、青学陸上競技部監督に就任。09年、33年ぶりに箱根駅伝出場。以後、10年連続出場。18年、史上6校目の総合4連覇を果たす。

加藤 克利
KATSUTOSHI KATO

ゾエティス・ジャパン株式会社代表取締役社長。1966年7月4日東京都神田生まれ。大学卒業後、会社勤務を経て米国大学院に留学しMBA取得。2010年、ファイザーにコンパニオンアニマルビジネス統括部長として入社。16年5月1日、ゾエティス・ジャパンの代表取締役社長に就任。18年3月1日より、日本に加え韓国も統括。


加藤克利
原さん、本日はよろしくお願いします。実は私、青山学院大学の出身です。監督として陸上競技部を強化し、母校を箱根駅伝4連覇に導いていただいた原さんには大変感謝しております。ありがとうございます。
原晋
こちらこそ、いつも応援ありがとうございます。
加藤
毎年、正月はテレビにかじりついていますよ。さらに陸上界を改革するリーダーとしても非常に尊敬しています。今日は実際にお目にかかり、私の目指す「業界メジャーリーグ化構想」のヒントが得られればと思っています。よろしくお願いします。
さて、原さんは2004年に青山学院大学陸上競技部の監督に就任されました。陸上選手を引退後はサラリーマンとして会社勤めをされていて、いきなり大学陸上競技部監督という畑違いの場所に飛び込んだかたちです。著書を拝読させていただくと監督就任にあたっては「覚悟」という言葉がキーワードとして使われています。具体的にどのような覚悟で監督を引き受けられたのでしょう。
3年契約で監督業を引き受けて、そのときに思ったのは「必ず何か壁にぶち当たるだろうな」ということです。それはどんなことを成すときでも、当然あるだろうなと想像できました。そのときに決意したのは壁を迂回して解決するのではなく、真正面からぶつかって直球勝負で解決をしようということです。そしてもうひとつ、自分は何のためにここ青学陸上競技部に呼ばれたのか。陸上競技部を強くすること、箱根駅伝で勝つこと。そのことに対してはブレずに突き進んでいこう。この2つが監督を引き受ける際の覚悟でした。
加藤
就任当初、部員と門限のことでも揉めるなど相当苦労されたと聞きました。
学生たちが陸上競技部の寮の門限10時は厳しいと言い出したのです。それは学生は楽な方がいいですからね。そして大学の学生部に泣きついたらしくて、学生部も「原さん、10時は厳しいのじゃないですか。一般寮を調べてみたら11時のところもあるし、週に1度は門限なしの所もありますよ。ちょっと緩めた方が……」と言ってきたわけですよ。でも、そこは譲れません。どうして学生たちが「門限が厳しい」と訴えるかといえば、遊びたいからですよ。こっちがなぜ厳しくしているかといえば勝ちたいからです。「そんなことで勝てるわけがないじゃないですか!」と突っぱねましたよ。
加藤
まさに覚悟を決め、退路を断っての挑戦だったわけですね。私も社長になって2年が経ちましたが、自社のことだけを考えていればいい時代はとっくに終わったと思っています。今まで以上に業界のために尽くしていかなければという「覚悟」を持って業務に励んでいるつもりです。動物薬業界全体の認知度を上げる活動、「業界メジャーリーグ化構想」もその一環です。もし自分が業界に貢献できていないなと感じたら、自ら退くべきだとさえ思っています。言うなれば見えない刀を背中に背負って仕事をしているようなものですよ。
見えない刀ですか。経営者にはそれくらいの「覚悟」が必要ですよね。私も中国電力時代、5人で新会社を設立するプロジェクトを任されたことがあります。そのときに感じたのは、自分たち経営者が何もしないと会社というのは潰れてしまうのだな、ということでした。当然のことながら、ただそこにいるだけでは会社は成長しない。やはり成長するためには社員を増やさなきゃいけない。人事で良い人材を確保するには広報活動も必要になってくる。さらに商品を売るためにはプレゼンもやらなきゃいけないし、契約書にハンコももらわないといけない。そういう一通りの苦労を全部経験した後、陸上競技部の監督になったわけですが、今から考えると、社会人時代の経験はすべて今にいかされているなと思います。

加藤
会社も陸上競技部も組織として成長するために必要な点に違いはないというわけですね。
そうです。会社なら売上、陸上ならタイムや順位。出てくる結果が違うだけで、そこに至るまでの過程は一緒だということです。
加藤
青学陸上競技部の飛躍の一因と言われるものに「目標管理シート」があります。あれも会社員時代に学んだことを活用されているわけですか?
そうですね。私は埼玉医大の客員教授という肩書もあって、以前、同大学で教職員を対象に講演をさせてもらいました。そのときに、そこの教授から目標管理シートについて、お褒めの言葉をいただきました。「原さんはスポーツにマネージメントを取り入れられたのですね。それは初めてのことですから、勝つべくして勝ったのですね」と。でも、サラリーマンだった私からすれば、当たり前のことをやっているつもりなんですよ。部員に目標を書かせるわけですが、「頑張ります」と曖昧なものではなく、いわゆる5W1Hという「いつまでに、どのようになりたいか」と具体的なものをシートに記入させます。営業マンなら目標達成のために誰もが書いているものです。ただ、従来のスポーツ界にはそういう習慣はなかった。それだけスポーツが遅れている産業だったということです。
加藤
シートに記入することで、選手たちはより具体的な目標を意識できるわけですね。
あとは戻るべき場所を作ってあげることも大事なんですよ。私の言葉でいう半歩先の目標を自らの意思で考えてシートに記入する。そのために「僕、頑張ります」ではなく具体的なやり方も記入する。自分のやっていることを書き写すことによって、ちょっと横道にそれたときにそこが戻る場所になる。そこからまた半歩ずつ進んで、青学陸上競技部は成長したというわけです。
加藤
いわゆるPDCAサイクル、PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(評価)→ACT(改善)を繰り返した先に成長と成功があるということですね。
そうです。PDCAサイクルについても、最初の頃は口を酸っぱくしてミーティングでいつも話していました。学生たちに「陸上競技はPDCAの繰り返しなんだよ」と。よく私の指導法が持ち上げられますが、ビジネス界では至極当然のマネージメント手法を陸上界に落とし込んだというだけの話なのです。
加藤
原さんは「落とし込んだだけ」とおっしゃいますが、これまではそういう引き出しを持った指導者がいなかったという意味で、それも大きな改革ですよ。ゾエティス・ジャパンでもPDCAサイクルをしっかりと回すことには徹底して力を入れています。当初はPDCAのうち「P」の部分、すなわち計画だけ立てて満足しがちでした。でも今ではPDCAがしっかりと回っていると実感しています。やるべきことを確実にやれば、結果はあとからついてくるのだと私は考えています。社内でも「愚直に実行」を口ぐせのように言っています。
まさにその通りですね。ところで、ゾエティス・ジャパンでの目標管理手法はどういったものなのですか?後学のために、最先端のビジネススキルを教えてください。
加藤
ゾエティスはグローバル企業ですので、グローバル全体の目標もあれば、ジャパンとしての目標もあります。そしてジャパンの中にも統括部や営業部という様々な部門があって、その部門ごとに目標がある。そして社員個人の目標もあります。そういう中で特に注力しているのは、これらの目標が階層ごとにバラバラにならないようにすることです。バラバラになってしまっては、目標が絵に描いた餅で終わってしまいますから。それぞれの目標がリンクするようにして、たとえば個人の目標が達成されれば、営業部の目標が達成される。そして営業部の目標が達成されれば、統括部の目標が達成される。そしてその先にはジャパンの目標達成があり、最終的にはグローバルの目標達成にもつながる、というものです。言葉にすれば簡単ですが、実現出来ている企業は多くないと思います。
なるほど。いや、こうして異業種の方と話をするのは本当に面白いですね。

加藤
ありがとうございます。次に伺いたいのは青学陸上競技部の意識改革についてです。就任当初、部員の意識改革に相当力を入れて取り組まれていたと聞いています。具体的には「できないを前提ではなく、できるを前提に考える」、そういう癖を付けてきた、と。これによって、部員が相当変わったという実感はありますか。
就任していきなり「優勝するぞ」と言ってもウソになる。目標と妄想は違いますから。時には妄想も必要ですが、現実的な目標、いわゆる半歩先のできる目標を立てさせて、成功体験を通して喜びを感じさせる。「できることをやらせる」という前提で指導していました。そうすることで、やがてこちらが何も言わなくても、自分でやるようになるのです。成功体験を積んで、半歩先さらに半歩先へと進む。そして振り返ったら10歩も20歩も進んでいた。そうなると自分たちで作戦を考えて、行動できる。そういう組織になっていきました。
加藤
弊社にはオズの魔法使いという寓話を元にした「オズの法則」というものがあるのですが、先ほどの「できるを前提にした考え」と同じような法則です。
それはどういったものでしょう。
加藤
オズの魔法使いの物語の始まりは、ドロシーという主人公が竜巻に巻かれて、突然、別の世界に連れていかれてしまいます。両親とも離れ、飼っていたワンちゃんとも離れ離れになって、ドロシーは別世界で日々、泣いてばかりいるわけです。そこに同じように被害者意識の塊の気弱なライオン、ブリキの木こり、かかしが登場して、「何で自分たちはこんな大変な思いをしないといけないのだ」とブツブツグチグチ、傷をなめ合うわけですよ。でも、それでは何の解決にもならない。ある時、ドロシーもそれに気が付くわけです。「このままじゃいけない」と。別世界に飛ばされたけど、もうこれが自分の人生なのだから、自分がしっかりと当事者意識を持ってやっていかないといけないのだ、と。そうすると、泣いてばかりだった日々からガラッと変わるわけです。当事者意識を持てば何かしら次のことを考えるようになる。そこから様々な解決策を思いつき、それを行動に移して、最終的に元の世界に帰れるという物語なのですが、ここから生まれたのがオズの法則の「ライン上とライン下」という概念なのです。
ホーッ、ライン上とライン下とは?
加藤
はい。ライン下というのは、最初にドロシーたちが陥っていた被害者意識の塊のことです。要するに、この状況は自分のせいじゃない、だから関係ないという考えです。組織や会社に当てはめれば「これは自分の仕事じゃない」「これは放っておけばいい」と考える人間です。でも、そういう考えばかりでは、どんどんと悪いサイクルに陥ってしまい、組織の発展は望めません。反対にそのラインよりも上に行く、ドロシーでいうところの意識を入れ替えれば、厳しい現実でも冷静に見つめることができます。仕事に限らず実社会は厳しいことだらけです。でもそこで当事者意識を持ち、これは自分のことだと受けとめれば、そこから自ずと考えて行動するようになり、結果として様々な解決策が生み出される。これが「ライン上、ライン下」の概念なのですが、いかがですか?
なるほど。これは面白いですね。
加藤
簡単に言うとライン下は言い訳合戦。言い訳やできない理由というのはいくらでも思いつきますよね。でも、できる理由を思いつくのは、なかなか難しい。だけどライン上の意識を持っておけば、厳しくても現実を直視することができる。そこから当事者意識をもつ。解決策を見つける。このサイクルです。ゾエティスでは全社員がノートパソコンやタブレットにこの「ライン上、ライン下」のシールを貼り、常に自分の発言、行動がライン上なのか下なのかを意識するようにさせています。
今度、ウチの全体ミーティングのときに紹介しますよ。いや、いいことを教えていただきました。

加藤
母校の陸上競技部の発展に役立つことでしたら、こんなにうれしいことはありません。
原さんは毎年、箱根駅伝を前にキャッチフレーズを発表しますよね。今年は「ハーモニー大作戦」でした。今まで駅伝の記者会見なんて興味なかった人も、原さんのキャッチフレーズを知りたくてチェックするだろうし、新聞やテレビも「監督、見出しにいただきます!」という感じでおいしいですよね。
プロ野球の監督って昔は、ポンッと新聞の一面になるようなコメントを発表していたじゃないですか。それに倣っているわけじゃないのですけど、12月の記者会見で普通のことを言っても面白くない。監督の言葉遊びというと軽くなってしまいますけど、言葉力というか、あれも人々の注目を集めるひとつの作戦ではありますね。そのときのチームの状況を表す言葉として、これからも続けていきたいと思っています。
加藤
原さんのそうしたキャラクターの影響なのでしょうか、青学の選手はコメントカが高いというか、コミュニケーションカに優れている気がします。コニカミノルタに進み、今はプロランナーの神野大地選手が箱根駅伝を走り終えたあとのインタビューで「これでジンノではなく、ちゃんとカミノと呼んでもらえます」なんて言っていたのは、相当にユニークだなと思いました。かつての体育会系の選手にはなかった発想ですよね。
神野自身の考えもありますし、何よりも青学陸上競技部、そして私自身が「話をすることはいいことなんだ」「提案していくことはいいことなんだ」と言い、選手たちにも「どんどん喋りなさい、発言しなさい」という空間を作るよう心がけました。これまでスポーツ界は、ともすると、何かもの申すと「お前、生意気だな」と思われていた。そういう空気を全部取っ払いましたよ。
加藤
そうした風通しの良い組織作りというのはすばらしいですね。あと、私が原さんを見ていて感心するのは、先ほどのキャッチフレーズでもそうですが、難しいことを簡単な言葉に落とし込んで説明する能力です。今までうかがったビジネスとスポーツの関係性も非常にわかりやすかった。
私は大学の指導者ですが学者ではありません。だから難しいことを細かく言うことは苦手なんですよ(笑)。
加藤
いや、難しいことをいかにかみ砕いて分かりやすく示すかということが非常に重要です。私の業界メジャーリーグ化講想というのも、難しいことは抜きにしてわかりやすく簡単に伝えるということをかたちにしたものなのです。
あのキャッチフレーズは本当にわかりやすい。たぶん、業界の他の人たちも「加藤社長の目指しているのはこういうことなのか」とすんなり理解できていると思いますよ。でも、逆に言えば、今はまだゾ工ティス・ジャパンを含めて動物薬業界はマイナーリーグ、世問にはあまり知られていないということですか?
加藤
おっしゃるとおりです。正直なところ、原さんは動物薬メーカーのゾエティスという会社をご存知でしたか?

今回、加藤さんにお目にかかるにあたって初めて知りました。私は犬と猫を飼っていて、そのときにワクチンやクスリでお世話になっているはずですが……。このような業界が存在することも、メーカーがどこなのかということも、意識したことがなかったですね。
加藤
多くの飼い主さんがそうだと思います。弊社の業務内容を説明しますと、コンパニオンアニマル(伴侶動物)や牛・豚・鶏の畜産用の医薬品の開発・製造・販売を行っています。どちらも非常に社会貢献度の高い業務だと自負しています。犬・猫の場合、ワクチンやクスリを開発することで病気を予防したり、病気から救うことができます。それで愛犬や愛猫が長生きすれば、飼い主さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)の向上にもつながります。
ペットは家族同然ですからね。ペットを飼っていない人は「亡くなったら別の犬や猫を飼えばいいじゃない」と言いますけど、やはり飼い主としては「この子」に長生きしてほしいんですよ。
加藤
愛犬や愛猫の健康を守って長生きさせることは、ご家族である飼い主さんに生きがいを提供することに他なりません。また畜産系の医薬品によって牛・豚・鶏を病気から守ることは、安全な食を提供することにつながります。このように仕事を通しての社会貢献度はものすごく大きいのですが、その割にはなかなか社会的に認められていないというジレンマがあります。
まだまだマイナーだ、と。
加藤
まだ認知度は低いですね。ゾエティスは世界で一番シェアが高い会社で、私は2年前にその日本法人ゾエティス・ジャパンのトップに就任しました。こうした影響力のある立場になったことで、この業界の社会的認知度を上げるためにできる限りのことをやっていこう、と。そこで「業界メジャーリーグ化構想」という旗を掲げ、日々、業務に励んでいます。言うなれば業界革新、業界そのもののイノベーションです。
スポーツ科学には「トリプルミッションの好循環」という考え方があります。当該スポーツを発展させるための「理念」が真ん中にあって、その周囲に「勝利」「普及」「資金」というサイクルがある。この3つの項目が好循環することで当該スポーツが発展するというものです。
加藤
青山陸上競技部の場合には、箱根駅伝での勝利があって、そこから好循環が生まれて成長したというわけですか。

そうですね。さらに勝利には箱根駅伝だけではなく、高校時代の自己記録を伸ばしたとか、あるいは大学スポーツですから学生をきちんと進級させて卒業させて、そして就職させたというのもひとつの勝利です。勝利の後には普及があったわけですが、私が陸上以外の様々な媒体に出ていくことによって、多くの方に青学の良さを知ってもらえました。そうなると、今度は資金が入ってくる。その資金を強化に回すことによって、さらに強くなる。組織の成長にはこうした好循環が必要不可欠というわけです。
加藤
スポーツ科学というよりも、経営学の講義を受けているようです。
加藤さんが率いるゾエティス・ジャパンも同じではないですか?加藤さんのお話をうかがっていると、真ん中にメジャーリーグ化構想、動物薬業界の認知度を上げようという理念がある。それは決してお金儲けなどではなく動物、そして飼い主さんを幸せにするという立派なものです。今、業界トップシェアということで「勝利」を手にした。そうなると次は「普及」ですよね。今、ここがポイントじゃないですか。
加藤
まさにおっしゃるとおりです。現在、ゾエティス・ジャパンではCSR(社会貢献)活動の一環として子供たちにペットと共に暮すことの素晴らしさを伝える活動を実施しています。そこでは獣医師さんの地位向上のために、獣医師は夢のある仕事で人間の医師にはできない素晴らしい仕事をしているということも伝えています。こうした普及活動を実施することで、将来的に優秀な人材がゾエティス・ジャパンだけでなく動物薬業界に入ってくるようになると願っています。そうすれば右肩上がりの成長も期待できるというわけです。まさにメジャーリーグ化のためのトリプルミッションの好循環サイクルです。
元々、監督就任時から思っていたことですが、こうして企業のトップである加藤さんのような方とお話すると、スポーツもビジネスも発展の手法に違いはありませんね。加藤さんは私と同い年ですが、なんとも頼もしく勇ましい経営者ですね。
加藤
ありがとうございます。でも、業界の他の人たちと話をすると「加藤さん、それいいね!」と言ってくれるのですが、「でもね、やっばり難しいよ」と一言加わるのが常です。この業界はまだ古い商慣習が残っていて、そのあたりもまだまだ越えなければならない障壁だと感じています。原さんも今の陸上界に対し、「古臭いな」と思うこともあるのでは?例えば箱根駅伝の全国化にはまだまだ反対の立場の人もいると聞きます。
私は箱根駅伝の全国化には賛成の立場です。ただ陸上界を含めて今の日本には、大局的に物事をとらえる人があまり多くない。自分の損か得かだけで判断する人が多いのですね。日本が世界に打って出るにはどうすればいいかという視点がないし、箱根駅伝というものを通して、社会をより良くするという気概もない。ちょっと引いた目で全体を見れば、視野がどんどん広がるのでしょうけども……。
加藤
私も動物薬業界のメジャーリーグ化のために、大局的な見方ができるようにさらに精進したいと思います。さて、対談の最後に、原さんから私にメッセージをお願いできますか。
業界のリーダーとして、これまで以上に熱く生きてほしいと思います。業界内で打ち砕かれそうになることもあると思いますが、それに負けずに、リーダーとして業界のメジャーリーグ化に取り組んでほしい。私も陸上界の中だけで生活していると「あれ、自分の方が間違っているのかな?」と思うことがあります。でもそういうときに異業種の方と会うと、やっばり間違っていなかったんだ、と再認識できる。今日、加藤さんに会ったのも私にはとても貴重な体験でした。
加藤
原さんにそう言っていただき、ふつふつとさらなる闘志が湧いてきました。原さんとまた建設的な話ができる機会を楽しみにしています。