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特別座談会 犬の嘔吐の治療および管理の実際と対応

嘔吐を引き起こす原因は、消化器病をはじめとするさまざまな疾患や病態、薬剤による副作用、乗り物酔いなど多岐にわたり、確定診断が難しいことも少なくありません。
きちんとした診断にたどりつかない場合には、嘔吐症状が継続することにより全身状態が悪化し、原疾患の治療にまで影響を及ぼすこともあります。
今回、新たに犬用の制吐剤「セレニア®」(ファイザー社)が発売されたことに合わせ、嘔吐を呈する犬の評価や診断法、制吐剤の使用法など、臨床現場におけるご意見を話し合っていただきました。

滝口
本日は、犬における嘔吐の治療と管理について、制吐剤の使い方を中心にお話を伺いたいと思います。まずは嘔吐症状を呈した患者が来院したときに、普段どのように嘔吐を評価し診断しているのか、お聞かせいただけますか?
竹内
一般的にはその嘔吐症状が本当に嘔吐であるのかどうかを判断することが臨床上、最も重要になってきます。おそらく心疾患による咳や吐出なども飼い主さんは「吐くようなしぐさをする」という表現でおっしゃいますので、それを嘔吐と誤診しないようにすることです。そして嘔吐と判断した場合は、その原因が何なのかを鑑別していきます。単純な胃炎、異物摂取、膵炎などを念頭におき、問診を進めます。もし嘔吐が激しいようであれば、臨床検査を実施し、電解質バランスや脱水の評価を行い補液の必要性を検討し、さらにX線検査などの必要な検査を実施します。
米元
私の病院は田舎にありますので周辺に田畑が多く、農薬の摂取の可能性も考えます。X線検査や超音波検査では診断できないので、稟告によって散歩中での農薬摂取の可能性が疑われれば、血液検査を実施します。
竹内
私も同じく稟告で詳しい状況を確認しています。そして中毒を疑う場合には、吐き気よりはどちらかというと不特定の症状と呼吸の異常、X線画像でパラコート中毒に特徴的な間質性肺炎が認められれば、稟告と合わせて診断していくという手順になります。
峰岸
私もやはり問診に時間をかけて、飼い主さんにいろいろ聞いてみるしかないと思っています。症状を見て元気そうだなと思っても、中毒のなかでも農薬の場合には症状が後から出てくるものもあるので、検査は問診の状況により、X線検査、超音波検査、あるいは血液検査を行います。
滝口
これまでのお話を伺うと、稟告が大事であるということがよくわかりましたが、冒頭でも話が出ましたように、本当に症状が吐出ではなくて嘔吐で間違いないかなどを確認するために、飼い主さんへの稟告の仕方で何か工夫をされていることはありますか?
米元
嘔吐と吐出の違いについてですが、「前兆もなくいきなり吐くのか」、「波打ってから吐くのか」、「波打ってから吐く場合には筒状に吐くのか」、「体のどの辺りから吐いているのか」などを飼い主さんから詳しく聴取します。普段その犬の世話をしている人ではない人が病院に連れてくる場合もありますが、必ず嘔吐の瞬間を目撃した人からその様子を伺うことが大切だと思います。
峰岸
確かにそうですね。一番困るのが、「お父さんが連れてきたんだけど、実際面倒をみているのはお母さん」などといったケースです。一番近くでみている人の意見が最も知りたいところなのです。そこをいかに聞き出すかというのが問診のテクニックであり、とても重要なポイントであると思います。それによって、「吐いたものがどういう状態のものなのか」、「食べてすぐ吐くのか」、「吐くときの行動はどうなのか」などといった情報を詳細に聞いて判断していきます。

「2. 嘔吐の原因と検査法」はこちら >>

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